相川コータロー作品集

Wraith

作:相川コータロー


生きてることが嫌になって、生という束縛からの解放を望んだ。
「この世界に、僕が生きれる場所なんてない。」
そう思い込むことで、妄想の世界に浸ることが出来たんだ。

自分の想像通りに物事が進み、理想通りのものが存在する。
そんな世界に、僕は心を奪われていたのかも知れない。

でも、そんなのは間違いだったと気付いたんだ。
僕の目の前に、君が現れてから、全てが変わった。
恋をしていたのだろう。幸せな気持ちに包まれていた。

君と居られる時間を守ることこそが、僕の生きる意味になっていた。
不思議なものだよ、人間というのはさ。
現実から逃げて、空想に入り浸り、好き勝手して、満足する。
現実は何も変わってないというのに、変わった気になって、生きているんだ。

哀れなものさ。

まぁ、今頃こんなことを言った所で、何の意味もないな。
君はもう、僕のことなんて覚えていないんだから。

どこにも残されてない。僕の身体なんてないんだ。
それどころか、君の記憶にすら残されていない。
だから、僕はあることを考えた。

「君のことを、見えない場所からではなく、すぐ側で見届けよう」と。

それが今の僕に出来る最大限の感謝の印だ。
ごめんよ、こんな出来損ないで。

「次に会う時は、必ず幸せにして見せるから。」