相川コータロー作品集

海未宙体

作:相川コータロー

空から海の底に落ちていく人のお話


誰もが、狂気を隠し持って生きているこんな世の中がおかしいと思うんだ。

 俺は今、ヘリコプターに乗っている。何処かに向かっているのは分かるが、それが何処なのかは分からない。
 知らされていないからだ。だから、このヘリコプターが何処に向かっているかは分からない。

 職員三名が話している。どうやら俺について話している様なのだが、内容までは把握出来ない。
 おかしい……。きっとそんなことを職員達は言っているのだろう。

 あぁ、俺はおかしい。幼い頃から悪さばかりをして、親に迷惑を掛けまくった。
 だからと言って、それを悪いとは思っていない。
 したいことをした。その程度としか思っていないからだ。

 しかし、今の世の中は地獄だ。崩壊の一途を辿っていると言っても良いかも知れない。
 強盗や殺人、汚職や横領、法律改正によってもたらされた悲惨さが、浮き彫りになってるのだろう。
 まぁ、俺には関係のない話だ。

 ヘリコプターの操縦者が、目的地に着いたことを大声で伝えている。
 職員三名が、何やら用意を始めた。

 あぁ……初めて見る空だ。雲一つない、気持ち良い日だ。

 職員三名が俺の腕を掴んで、今から行うことを教えてくれた。

 「君の死刑を、今日執行する。」
 あぁ……そういうことか。だから刑務所から連れ出されたんだな。
 やっと、理解出来た。

 そして、職員の一人が今居る場所を教えてくれた。
 太平洋の上空、約5000mの所に居るという。

 「最後に、言い残すことは、あるか?」
 「ありません。」
 「そうか。ならば、執行する。」

 職員の一人がそう言った瞬間、俺はヘリコプターから落とされた。