相川コータロー作品集

死屍累々:死屍は空虚な眼差しで見つめる

作:相川コータロー

獣に殺された一人に怨念が現れて獣を殺さんとする。そんなお話。


「人生は理不尽だ」と叫びまくった死屍は獣に殺された。
彼等は死屍を―――玩具だと思っているのだろう。
取るに足らないもの。それが私なのだから。

「存在価値がない」と叫びまくった死屍は獣に弄ばれた。
彼等は死屍を―――道具だと思っているのだろう。
取るに足らないもの。それが私なのだから。

「生きる意味がない」と叫びまくった死屍は獣に喰われた。
彼らは死屍を―――害虫だと思っているのだろう。
取るに足らないもの。それが私なのだから。

死屍である私には命がない。
心臓が止まり、息すら出来ず、脳も使えない。
死。私が一番望んでいたこと。
でも、こんな最期は―――望んでない。

あぁ~神様。私にもう一度生きることを許してください。
あぁ~神様。私にもう一度頑張ることを許してください。
あぁ~神様。私にもう一度泣くことを―――赦してください。

この場所に散らばる死屍一人一人がそう祈る。
が、そんな想いは神様に届く訳もなく、ここで怨霊になった。

そう、獣達を怨み殺す為に、怨霊になった死屍は歌った。

救いの手を払い除けた獣達には畜生の歌を。
救いの経を扱き下ろした獣達には餓鬼の歌を。
救いの声を踏み付けた獣達には地獄の歌を。

一匹も生かして帰さぬという怨念を込めて―――