相川コータロー作品集

臆病者

作:相川コータロー

臆病な少年「僕」と幼馴染の「君」が特別な気持ちに気付く物語。


 曖昧な事ばかりなこの世界で確かな事を探し求める。
 君の眼に映る風景はどんな色をしているんだろう。
 気になった僕の心に芽生えた不思議な感情。

 痛みが生じるけど不快感とは違う。
 何とも言えない表し得ることのない僕の緊張。

 君の笑顔を見て可愛いと思った僕の心。
 鏡で自分の顔を見たら赤く染まっている。

 君の側に居ると変な気持ちになる。
 いつでも会えるはずなのに寂しくなる。

 体調が悪くなり、保健室に行ったら君が居た。
 楽しそうに先生と話していた。

 「最近好きな人が出来たんです。」
 「あら、良かったわね。」
 「はい。」
 「その人はどんな人?」
 「私のことをいつも見守ってくれている優しい人です。」
 「あら、素敵ね。」

 特別なことは言ってないのに涙が出てきた。
 君の好きな人は優しい人だと分かったから。

 「ねぇ、その人ってもしかして……」

 僕はその先を聞きたくなくて逃げ出した。

 「はい。バレちゃいました今。」

 屋上の扉の前で座っている僕は思った。
 臆病な僕を好いてくれる人なんて居る訳がない。
 そう信じてこれまで生きてきたから良く分かる。
 僕に好きな人が出来るなんてあり得ない。

 「先生は、この気持ちを彼に伝えた方が良いと思いますか?」
 「うん。伝えた方が良いと思うわ。どういう結果になったとしてもね。」
 「……分かりました。」

 「僕はダメなんだ。ダメなんだ。ダメなんだ。ダメなんだ。ダメなんだ。」

 足音が聞こえてくる。こちらに向かってきてる。

 「もぉどこ行ったの……。はぁ……。」

 君の声が聞こえてきた。
 ふと危ないと思った僕はドアの近くにあるクリーンロッカーに隠れた。

 君が屋上の扉の前に来て座り込んだ。

 「やっと、伝えられると思ったのに……。」
 「苦しいなぁ……。寂しいなぁ……。」

 僕の頭がクリーンロッカーの扉に当たり、音が鳴って扉が開いた。

 「また聞かれちゃった……。」