相川コータロー作品集

空洞人形:第8話 無翼鳥

作:相川コータロー


澄み渡る空に憧れる鳥が居た。

「翼を失ったのに、まだ空に憧れているのかい?」
「はい。まだ、諦めきれない想いがあるんです。」
「ならば、飛んでみたらどうだい?」
「どうやってですか?」
「決まっているだろう。腕を広げるのさ。」
「こう、ですか?」

翼を持たぬ鳥は、お婆ちゃん鳥に言われた通りに自らの腕を大きく広げた。

「そうだよ。ほら、走ってごらん。」

飛べるかどうかは分からないけれど、走り出した鳥。

「今だよ、土を蹴って!!」

お婆ちゃん鳥の掛け声が聞こえてきて、土を強く蹴った。
少しだけ身体で浮遊を感じた。
しかし、すぐ土の上に身体が叩きつけられた。

「どうだい?飛ぶって感覚が分かったかい?」
「はい。分かりました。」

初めての感覚。空を飛ぶという夢に少し近付いた。

「私、これからも頑張ります。」
お婆ちゃん鳥にそう言い残して、翼を持たぬ鳥は空を眺めながらそっと心に決めた。

「私は、空を飛ぶ。誰よりも高く、あの空の彼方にある雲の上まで、翔けて見せる。」