相川コータロー作品集

カセットテープ:カセットテープⅨ

作:相川コータロー

レンタカーのダッシュボードに入っていたカセットテープを再生してみた。


 「なんだ?この紙とカセットテープは」
 「どうしたの?」
 「ダッシュボードに一枚の紙と、カセットテープが一個入ってるんだ」
 「ちょっと見せて!!」
 「あ、うん」
 僕の彼女は、嫌な顔をしている。

 「ねぇ、あなた」
 「どうしたの?」
 「この紙に書かれてること、読めないの?」
 「え?何も書いてないじゃないか」
 「そう……。ならしょうがないね」
 「どういうことだよ!!説明してくれよ!!」
 「じゃぁ、カセットテープの方を聞いてみましょ」
 「分かった」

 カセットテープを再生してみると、5分間ノイズだけが流れて終わった。

 「なんだこれ……ノイズだけじゃないか」
 「あなたには、ノイズしか聞こえなかったの?」
 「あぁ、君には何が聞こえた?」
 「言わないとダメ?」
 「あぁ」
 「じゃぁ、分かりやすく言うね。このカセットテープには何も入ってないよ」
 「え?ノイズも?」
 「うん」
 「じゃぁ、何も聞こえなかったってことか?」
 「ううん。ちゃんと聞こえたよ。違う所から」
 「違う所か?」
 「うん」
 「それはどこだ?」
 「言いたくない」
 信じてもらえるわけないじゃん。
 カセットテープの中身はノイズだけなのに声が聞こえてきて、声がする方向を見たらあなたの後ろに黒髪の女性が居たなんて……。
 言えるわけないじゃん。
 黒髪の女性が言ってたことは、「二人とも殺す」ってことだったんだから。