相川コータロー作品集

忘却の彼方の気持ち

作:相川コータロー

自分が心の自分と会話する物語。


部屋に入り、ベッドに横たわる。

「あなたじゃないとダメなのに……。」
小声で呟いた言葉は、部屋に拡がるだけで、消えてゆく。

「どうして……どうしてよっ!!どうして私じゃダメなのよっ!!」
心の中から訴えて来る何かの悲痛な叫びとともに、私は意識を失った。

「あなたって本当に馬鹿。自分の気持ちに気付かないで、なんで人の所為せいにしてるの。」

「どういうことよそれっ!!」

「あなたは嘘吐きってことよ。」

「は?私がいつ嘘吐いたって言うのよ!!」

「え?だってあなた、好きな人に嘘の告白したじゃない。本当は好きでもないのに。」

「そんなわけないでしょっ!!」

「じゃぁあなたは今、あの人のこと好き?」

「当たり前よ!!私は、あの人のことが……すっ……すっ!!」
好きって言いたいのに、口から出せない。どうして?なんで?
私は嘘吐きじゃない……嘘吐きじゃない……嘘吐きなんかじゃないっ!!

「ほら、やっぱりね。あなたはただの嘘吐き。」

「違うっ!!違う違う違うっ!!」

「じゃぁ、何で泣いてるの?」

「え?」
手で自分の頬を触れてみた。
すると、冷たい水と同じ感触がした。

「なにこれ……。どうして私、泣いてるの……。」

「はぁ……。分からないならそれでも良いけど、ずっとそのままで居るつもり?」

「それは……。」

「次会う時に教えてね。あなたの答えを。それじゃぁ。」

「待ってっ!!」

次の日、私は雨が降る道路を歩きながら、学校に向かっていた。

「はぁ……。」
口から出る息は白かった。

「今日はそんなに寒くないのに、どうして息が白いの……。」

遠くから誰かの声が聞こえて来て、振り向いてみると……。

黒いフードを被ったの人に刃物で刺されてしまった。

「え?」

そのまま、黒いフードを被った人は、立ち去って行った。

……。なにこれ……。
何かがおかしい……。

「そう?おかしいかな?」

「……。」

「そう。あなたは、好きな人に手紙を書いて、下駄箱に入れた。中身は、「今日、体育館裏に来てください。」でも、あなたは行かなかったよね?それがあなたの吐いた嘘。思い出した?」

「何を言ってるのあんた……。」

「あぁ……覚えてないか。しょうがないね。」

「しょうがない?」

「うん。だって、あなたは失恋した日に精神がおかしくなって、恋してた時の記憶が全部ないんだもの。」

「……。そんな……。私一回も恋なんて……。」

「まぁまぁ、この会話も今日で終わり。」

「待ってっ!!お願いだからっ!!」

「もう、あなたと会うことはないから。ゆっくりお眠り。」